みんなのセキュリティコラム(Grafsec・SPREAD共同コラム)2021年11月10日配信

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【みんなのセキュリティコラム(Grafsec・SPREAD共同コラム)】
                    2021年11月10日配信
 『GIGAスクール構想×ネットリスク』
    子どものネットリスク教育研究会
    副代表 本間 史祥 様
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本研究会は2015年からネットいじめや有害情報問題、ネット依存、
ネット長時間利用による健康被害問題など子どもたちのネットリ
スクについて、啓発、調査研究、ネットワークづくりを行ってい
る団体です。

2020年3月に当時の安倍首相が発出した全国一斉の臨時休校によ
り学校現場ではオンライン授業が加速化しました。また、新型コ
ロナウイルス感染症対応のため、当初5年間かけて整備予定だっ
た“子どもたち一人一台端末”いわゆるGIGAスクール構想が前倒
しされました。2021年7月末の段階で、全国の自治体96.1%が整備
完了となり、学校教育が大きく変革した1年間でした。

今、子どもたちの机の上には、従来の学習用具に加え、配備され
た端末が置かれています。ICTを使った様々な授業や教育活動が
紹介され、研究が進められています。AIドリルを使った個別最適
化学習、協働学習アプリを使った授業、オンライン授業、プログ
ラミング教育など一人一台端末により子どもの学びは多様に広が
りつつあります。

一方で、内閣府の調査によると青少年のネット利用時間の平均は
約205分であり、前年度と比べて23分増加しています。また、0~6
歳までの低年齢層のネット利用時間は約103分であり、前年度と
比べて18分増加しています。各種統計調査を見ても、子どものネ
ット利用時間の長時間・低年齢化は進んでいることが現状です。
その影響から脳や視聴覚、睡眠などの健康被害が生じ、ネット利
用時間との相関が明らかになりつつあり、専門家が警鐘を鳴らし
ています。子どもや学校のICT化が進んだ反面、子どものネット利
用に不安を抱く人も増えたのではないかと感じています。その証
拠に2020年11月発行アンデシュ・ハンセン著「スマホ脳」が55万
部を超えるベストセラーになり、社会的な関心の高まりを感じて
います。

本研究会では、2021年2月に「GIGAスクール学習会」を行い、現職
教員より現場の実態を報告してもらい、学ぶことができました。
また、2021年8月には、現職教員3名+IT企業関係者の4名でパネ
ルディスカッションを行い、現場での状況を交流するとともに、
子どものためのICT教育とは何か、GIGAスクール構想の課題は何か
を探っていきました。ネットリスクを啓発するためにGIGAスクー
ル構想の実態を知ることで、子どもや学校に寄り添った啓発につ
ながると感じています。

また、研究会発足後初めてとなる「研究発表会」を実施し、特に
ネット長時間による健康被害について、6本の研究報告がありま
した。誌面の関係で、全ては紹介できませんが、ネット依存部門
では、ライブ配信アプリの機能や仕組みについて子ども目線で考
え、eスポーツとネット依存に関する先行研究調査などが報告さ
れました。

GIGAスクール構想の今後にも着目しながら、ネットリスクを啓発、
調査・研究を進めていきます。


【執筆者(本間 史祥 様)プロフィール】
子どものネットリスク教育研究会 副代表
教員をしながら、ネットリスクについて、啓発、調査・研究を行
っている。著書「スマホ・ネットの長時間接触による健康被害の
実際と対策~ネットリスク啓発者と保護者のテキスト~(編著)」


子どものネットリスク教育研究会
https://www.hiro-univ-netpat-otani.com/



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